コスタ＝ガヴラス監督の政治映画三部作、即ち「Ｚ」「告白」「戒厳令」は、それぞれ祖国ギリシャを想定したファッショ的軍事政権、スターリニズムの血の粛清、中南米に於ける独裁国家と陰で暗躍するアメリカCIA、を告発したポリティカル・サスペンスの秀作です。
どの作品も、権力のメカニズムが個人をいかに弾圧しているかを撃ち、同時に政治の不条理状況の不気味さをえぐり出していて、社会問題や政治に興味を抱き始めていた者には良くも悪くも刺激的であり、世界の混沌とした闇の扉を開かせてくれた映画でした。「戒厳令」は、当時、そしてそれ以降も続いたラテンアメリカ諸国での軍事政権と左翼ゲリラの血みどろの内戦と、陰で蠢くアメリカの覇権主義をモチーフとして、ある架空国家での極右政権を協力支援するＣＩＡ局員の極左革命派ツバマロスによる誘拐事件に端を発した両者のせめぎ合いと非情な駆け引きを描いている。全編ネオ・ドキュメンタリーな感覚、ひりひりとした緊迫感、恐怖と不安、闘争と葛藤。
サスペンスとの括りではとても収まらない硬質な政治映画としての側面、にも拘わらず息を呑みつつ見続けてしまう情報量と骨太さ。いつの時代でも、どんな社会体制になっても、強権や強欲によって支配しようとする者との闘い。
コスタ＝ガブラス監督の作品は、自由や尊厳が生きていく上で何よりも大切なものであると教えてくれる。
監督：コスタ＝ガヴラス製作：ジャック・アンリ・バラエティエ ジャック・ペラン脚本：フランコ・ソリナス コスタ・ガヴラス原作：フランコ・ソリナス撮影：ピエール＝ウィリアム・グレン音楽：ミキス・テオドラキス編集：フランソワーズ・ボノー
イヴ・モンタンレナート・サルバトーリＯ・Ｅ・ハッセジャック・ベベールジャン＝リュック・ビドー
115分 フランス語 日本語字幕
コスタ＝ガヴラス監督の「告白」も出品していますので興味のある方はどうぞ。
ＤＶＤの落札後、２日以内のご連絡と３日以内の